自分の体を治したくて、気功を学び始めた。なのに、何年やっても、いちばん治したいところがちっとも良くならない。それどころか、なんだか悪くなっている気さえする。
そんなとき、「私には向いていないのかな」「センスがないのかな」と、自分を責めていませんか。
まず、はっきりお伝えします。良くならないのは、あなたの腕が悪いからでも、センスがないからでもありません。実は、「自分を治そう、治そう」とすればするほど、気というのは通りにくくなるのです。
ここで一つ、大切な前置きを。「自分を治したい」という気持ち自体は、まったく悪くありません。人として、当たり前の気持ちです。私自身、頭が痛ければ治したいと思います。問題は、その気持ちではなく、「気を、自分の思いどおりに操作しよう」とする”感覚”のほうにあるのです。
気は”みんなのもの”――独り占めしようとすると働かない
そもそも気とは、あなた一人のものではありません。この宇宙、自然、あらゆるものに働きかけている、みんなのものです。
それを「自分だけのために」「独り占めしよう」とすると、気の働きの原理原則に合わなくなります。
税金と、同じ仕組み
たとえば、税金を思い浮かべてみてください。政治家が、みんなの納めた税金を私腹や汚いことに使っていたら、誰も税金を納めたくありませんよね。でも、その政治家がみんなのために立派にお金を使ってくれるなら、喜んで納めようと思える。
気も、まったく同じです。「この気を、みんなのために使わせてもらいます」――そういう心の状態になった人にこそ、気のほうが「もっともっと供給したい」と、たくさん働いてくれます。逆に、「自分のために」「自分の思いどおりに」と握りしめると、気はすっと引いていってしまう。これが、この宇宙の法則なのです。
「人に使ったら悪くしそう」という不安は、まともな感覚
こういうご相談も、よくいただきます。「自分がこんな状態なのに、人に気を使ったら、逆に悪くしてしまうんじゃないか。だから怖くて、誰にも使えない」。
これは、実はとてもまともな感覚です。順番を考えてみてください。まず自分に自己ヒーリングをしてみて、「これは本当に体感がある、素晴らしいものだ」と思えたからこそ、「人にもやってあげたい」と自然に思えるわけです。自分に効果を感じられなかったものを、人にやろうとは普通思いません。だから、その怖さはまっとうなのです。
だからこそ、順番として大事なのは――まず自分自身を自己ヒーリングして、「自分の体調が、気の働きでこんなに変わっていくんだ」と実感すること。
ちなみに私自身は、はじめから「気功師として、自分の体を自分で整えられるのは当たり前」という感覚でやってきました。自分を治すこと自体が目的というより、その体験を人に勇気として渡していく――そういう向きで、ずっとやってきたのです。向きが、外を向いているのですね。
「始めてから悪くなった気がする」をどう見るか
気功を始めてから、むしろ悪くなった気がする。そう感じる方もいます。
これは詳しく見てみないと分かりませんが、基本的には好転反応――気が動き出して、今まで眠っていた滞りがいったん表に出てきた、と見たほうがよいことが多いです。一時的に少し悪くなったように感じて、そのあとゆるやかに良くなっていく。これなら好転反応です。
ただし、正直にお伝えします。もし、その悪い状態がずっと慢性的に続いているなら、やり方を見直したほうがいい。「気を操作しよう」という感覚でやっていると、気がむしろ消耗して、自然治癒力が下がり、症状が悪くなることもあるのです。
そしてもう一つ大切なこと。気功だけをやっていても、症状は良くなりません。運動、食事、睡眠――そうした生活習慣も、一緒に整えていく必要があります。気は、症状が良くなる条件の一つにすぎない。体も、心も、暮らしも、ぜんぶが関わり合って今の状態がある。この、さまざまな縁(縁起)をまるごと見ていくことが、東洋医学であり、気功の本当のところなのです。
今日からできる、たった一つのこと
良くならないのは、あなたの腕やセンスのせいではありません。「自分のために、気を操作しよう」――その向きに、無理があった。ただ、それだけです。
では、今日から何をすればいいか。一つだけお伝えします。
身の回りにあるもの、全部に感謝してみてください。見えているもの一つひとつに、「ああ、これ、ありがたいな」と、心の中で思う。それだけです。
私たちが自分では気づけない盲点――その多くは、実は「感謝できていない」ことなのです。身の回りの当たり前にあるものに感謝する。そうやって心のブロックが一つずつ外れていくと、気の流れも、心もスムーズになっていきます。やがて体の症状もゆるんで、いずれは人を癒すこともできるようになっていきます。
自分のためだけに握りしめるのをやめて、向きを外へ、そっと開いてみる。そのとき、めぐりめぐって、気はあなたにも通いはじめます。




