生理学ではホメオスタシスという概念を使って、
生命を生きながらえさせるために、
現状を維持させようとする力が働いていますよ、
と説明しています。
生理学のいうホメオスタシスは、
物理的な外の環境に対して、
あなたの内側の体の環境が変化しているという説明です。
生命は、
気温の変化、
または空気中を飛び交う化学物質、
月や太陽の位置など様々な外部環境からの影響を受けています。
その結果、
汗をかいたり、
心臓がドキドキしたり、
瞳孔が開いたり閉じたりしています。
このことは当たり前のように経験されていることですのでわかるかと思います。
生理学のホメオスタシスの説明では生命現象は説明できない
しかし、
ここで一つの疑問が提示されてきます。
外部の物理的な環境に変化が無かったとしても、
私たちは汗をかいたり、
心臓がドキドキしたり、
瞳孔が開いたり閉じたり、
あるいは心拍数を少なくさせたり、
リラックスしたりすることができるという現象も見られます。
例はいくらでもあるのですが、
一番わかりやすいのは映画を見ているときではないでしょうか。
実際に爆発が起きてるわけでもないのに、
爆発するシーンがあると、
自然と心拍数が上がりますし、
手に汗握ります(そうならない人もいますが)。
多少ドキっとしたりはするでしょう。
その時はしっかりと身体が反応しているのですが、
何か大きな音がしたということ以外、
対して外部環境に変化は起きていません。
イスに座って映像を見ているだけなのです。
小説を読んで涙を流すことも同じです。
実際に悲しい出来事に遭遇したわけでもないのに、
静かに座って本を見て(読んで)、
感動的な文章や、
心に響く内容の箇所を読んでいると、
身体に変化が起きています。
一体これを生理学におけるホメオスタシスの概念で、
どのように説明したらいいのでしょうか。
あなた自身があなたに影響を与えている??
どうやら私たちは、
物理的な環境だけに影響を受けているわけではないようです。
それでは一体何に対して影響を受けているのでしょうか。
私たちが物理空間を感じるためのツールに五感があります。
つまり、
目に見えるもの、
臭うもの、
味わえるもの、
聴こえるもの、
手で感じられるものを我々は物理と言っています。
その手ごたえが不確かであり、
感覚的なものになればなるほど物理的なものから遠ざかっていき、
情報的なものへと変わっていきます。
情報的なものの代表は言語です。
小説の世界は言語が理解できなければ味わうことができません。
味わうことができたとしても、
想像力をフル活用し、
感じたものを五感に落とし込んで臨場感を上げなければ楽しむことができません。
また、
概念と呼ばれるものも情報的なものです。
愛という概念を匂ったり、
手でつかんだりできないので、
愛はすなわち情報的なものです。
しかし愛を感じることはできるはずです。
あなたは、
それなりに愛についての知識や経験をお持ちだと思います。
それは脳内の記憶としてストックされており、
五感で感じた記憶と一緒に連続的に存在しているはずです。
その記憶をもとに愛を感じることができるのです。
ここでわかってくるのは、
あなたの「脳内にある記憶」があなた自身に影響を与えているということです。
トラウマ現象や精神的な不調も説明できる
過去に不登校になってしまった人というのは、
校門を見るだけで具合が悪くなったりします。
校門を見るだけで体調に変化が起き、
具合が悪くなって頭痛が起き、
吐き気などを催してしまいます。
これは、
いじめられたり、
学校で嫌なことがあった過去の記憶の中に、
校門の映像も一緒になって記憶されているからです。
つまり、
校門を見るだけで、
学校での嫌な記憶に結びつく回路が形成されてしまっているのです。
反対に、
学校にいい思い出しかない人、
あるいは、
いい思い出も嫌な思い出も含め、
母校に対してポジティブな記憶がある方は、
校門を見ると大抵は懐かしい思いになったり、
物思いにふけったり、
青春を感じたりします。
そんな人は校門の前で急に具合が悪くなったりはしないわけです。
むしろ体調が良くなるまではいかなくても、
何か元気が湧いてきたりするのではないでしょうか。
これらの事例からわかるように、
身体のホメオスタシスは、
あなたの記憶に影響を受けていることがわかります。
あなたの世界は、あなたの記憶で成り立っている
私が受け持ったことのある患者さんで、
症状が良くなっていく方というのは、
症状という記憶を忘れてしまう方がほとんどです。
違う言い方をすれば、
自分がなぜ腰が痛かったのか、
肩が痛かったのかを疑問に思うくらいに忘れてしまうわけです。
なんで歩けなかったんだろう、
なんで膝が痛かったんだろう、
でも良くなったんだから別にいいや、
という感じです。
病気という記憶がなくなってしまえば、
身体のホメオスタシスも病気の記憶と結びつかなくなってしまいます。
だから病気にならないのです。
じゃあどうやってやるの?
という話はまた別の話になりますが、
気功が一躍かっているのは言うまでもありません。
気功というサポートの上で、
患者さん自身が健康という記憶を作ったということです。
病気を治すのに一番重要な事は、
自分は病気だ、
という記憶から、
自分は健康だ、
という記憶を作ることなのです。
「気功とは意識のコントロール」と言っていますが、
自分が健康であるという意識状態、
いわゆる健康な記憶状態を自分自身で作り上げていくことが気功なのです。
そうすることで、
もともとあなたに備わっているホメオスタシスが、
健康記憶に勝手にアクセスしてきて、
最終的には物理的な身体が、
健康になるということなのです。