いつまでも健康で幸福に生きていくために、あなたはどんなことを重要視していますか?
近年、心理学や脳科学の世界では、ストレスマネジメントとして瞑想などが心身の健康にとても良いということがわかってきています。
アメリカ心理学会などを始め、心の健康が体の健康に直結しているという証拠を、科学的に研究しています。
気功教室などでは、高齢者であればあるほど、心の状態が体の状態を決定づけているということを身にしみて実感されている方も多いようです。
それでは実際にどのようなことに気をつけて心を管理していけば良いのでしょうか?
そのヒントとなる4つのキーワードをこの記事では紹介していきます。では4つのキーワードとは何か?
- 諸行無常
現象は常に変化している - 一切皆苦
どうしようもならないことに悩んでも仕方がない - 諸法無我
自分のこだわりや執着をなくせば心は楽になります - 五蘊皆空
あなたは何者にでもなれます
感の鋭い方はお気づきでしょうが、仏教についてのお話になってきます。
世界の科学者の間では、ブッダの教えが最先端科学に通ずるものとして注目されています。ブッダが発見した悟りという境地が一体どのようにあなたの健康と幸福に関係してくるのか興味が湧きませんか?
全てを理解する必要はありませんが、必ず心が楽になる教えが仏教にはたくさん詰まっています。
あなたの心が軽くなる時、あなたの体にとてもいい影響が現れてきます。
この記事を読み終わった頃にはきっと心と体が楽になっていることでしょう。
「諸行無常」 現象は常に変化している
「諸々の現象は、常ではないのである」これが諸行無常の意味です。
あなたの体も、周りにいる人々も、植物も、ビルも車も、ずーーーっとその状態を維持できると思いますか?
100年前の日本の姿と現在の姿は随分と様変わりしています。無常であるということですね。常に動いているといってもよいかもしれません。
生命は動的平衡である
あなたという生命体は常に動きながら一定の状態を保っています。
外気温が高くなると、生命は環境の状態を察知し、体温を上げすぎないように発汗によって生体を一定の状態に保ちます。これが動的平衡(ホメオスタシス)と言います。恒常性維持機能とも言いますね。
私たちはあたかも実体としての生体がずっと存在していると思っていますが、生物学的には常に変化し続けているので、11ヶ月前のあなたの細胞はもうどこにもないのです。これも諸行無常です。
病気も無常
生命は常にホメオスタシスが働きますので、自然治癒力により勝手に健康体へ本来は戻るはずなのです。
生体の自然治癒力がしっかりと働く環境であれば、何も問題はありません。
環境とは、生体がフィードバックループを築く対象のことです。先ほどの体温を一定に保つという現象を例に挙げれば、この時の環境は外気温になります。
生命はあらゆる環境の中に住んでいます。それは外部の環境だけにとどまらず、あなた自身という内部環境に対してもフィードバックループを築いているのです。
ホルモンバランスというのも、内部環境に対する生体のフィードバックループです。
生体が外部環境によるストレスを感じると、脳の視床下部がそれに応答して副腎皮質刺激ホルモン放出因子を脳下垂体へと指令していきます。その脳下垂体が副腎にホルモンを分泌し、副腎が副腎皮質ホルモンを放出します。
この時生体は、「闘争・逃走」状態となり、外部環境のストレッサーから逃れようと、内臓に集中していた血液を四肢へと送ることに成功し、外敵から見事に逃れる、あるいは戦うことができるのです。ストレッサーというのは、あなたにストレスを与える直接的な存在のことです。
ストレッサーが去ってしまえば、脳はストレスを感じなくなったと判断し、視床下部の指令はおさまり「副腎皮質ホルモンはもう分泌しなくていいよ」と指令を出して「闘争・逃走」反応をやめます。
このように視床下部ー脳下垂体ー副腎という内部環境で相互に連絡し合い、フィードバック関係を築いているのです。
心の世界のストレスにも視床下部は反応する
今の話は外部環境のストレスの話でしたが、人間は進化の過程で心の世界も環境であると認識するように大脳が発達してきました。ですので、外部環境のストレッサーがいなくても、あなたはあたかも外部に敵がいるかのようにストレスを感じて「闘争・逃走」状態になってしまうのです!
脳の視床下部がストレスだと感じ続ければ、永遠にフィードバックループ状態が築かれてしまう危険性もあるのです。
生体にとって環境がしっかりと整っていれば、勝手に自然治癒力が働いて健康体へと戻してくれます。しかし、人間にとって環境とは、外部環境だけでなく、心の環境にもフィードバックループを築いてしまいます。
外部環境を物理空間とするならば、内部環境は精神空間・情報空間ということが言えます。生命は、物理空間と情報空間に連続的に存在するものなのです。
諸行無常ではありますが、因果法則によって、環境に適応しながら変化していくので、ストレスのある環境にずっと身を置いてしまうと、それなりに体が反応していきます。それが細胞の癌化であると考えています。
いくら諸行無常とはいえ、因果法則に従って現象は変化していきます。
生体が病気になるのは因果法則に則って変化していきます。それは言わずもがなストレスであるのです。ストレスがなくなれば因果法則と諸行無常の原則に従って、あなたを健康体へと変化させてくれます。
老いと死も必ず訪れる
生涯ずっと健康であったとしても、老死は必ず訪れます。なぜなら諸行無常だからです。何者もこの世界で永遠不滅で存在し続けるものはありません。
たとえストレスを回避し、健康になったとしてもあなたは必ず死ぬのです。そのことを忘れてはいけません。体も刻一刻と変化していきます。
健康で元気な時もあれば、災難などに会い、突然のストレスがあなたを襲うかもしれません。なので、あまり健康に対して執着しすぎると、ろくなことはないということも頭に入れておくといいでしょう。
健康ではなく、どうすれば幸せになれるかを考えましょう。
この考えこそが、諸行無常の真理を上手に利用できている考え方だと思います。
体はどれだけメンテナンスしても、やがては衰え死んでいく。体にこだわらず、心を清らかに幸せに生きることにフォーカスしていきましょう。
一切皆苦 どうすることも出来ない事に悩んでもしょうがないじゃないか
「苦」とあると、たいていの日本人は「苦しみ」という意味で捉えがちですが、これは中国語です。中国語で「苦」というのは「どうすることもできない」という意味もあります。
また、「苦」というのはもともとパーリ語の「dukkha」を中国語に翻訳したものです。「dukkha」には「どうする事もできない」という意味があるのです。
それでは具体的にどのようなことが「苦」なのでしょうか?
自分の肉体との別れ、親しい生命との別れは避けられない
要するに老いる事と死ぬ事はどうする事もできないという事です。
「死後の世界があるのではないか?」「きっと死んだら先祖に会えるかもしれない」とあーだ、こーだと妄想して、避けられない老死という事実から目を背け逃げようとするのです。不老長寿というバカバカしいことを目指してしまうのです。
老死を悩んでも仕方がありません。それは避けられないので悩むことではありません。ですから今この瞬間をしっかりと目的を持って生きるのです。「いつ死んでも構わない」と自分に語りかけてみましょう。
厳しい言い方かもしれませんが、「いつ死んでも構わない」と語りかけて、もし嫌な感情が湧いてきたら、あなたはまだ今という瞬間を精一杯生きるということから逃げてるかもしれません。やりたいことを目指して行動していないのかもしれません。
試しに明日世界が終わると思って行動してみてください。会社の人に優しくできるかもしれません。家族や恋人に優しくできるかもしれません。あるいは一生懸命仕事に没頭できるかもしれません。会社を休んで風情ある宿で一泊するかもしれません。
どちらにしても、あなた自身の本性が見えてくると思います。あなたが本当は何を達成したいのかが見えてきます。
二杯目のビールは旨くなくなる!?
「人生が結局どうする事もできない事だらけ」ということになかなか納得のいかない方にこんな話をしてみましょう。
人生を楽しもうと夏の暑い日にビアガーデンへ訪れて、友達と乾杯したとします。考えただけでなんかワクワクして楽しそうですね!
最初の一杯目の喉越しの旨さといったらありゃしません。この時は「人生楽しいぜ!」と思うかもしれません。しかしそれは楽しくなったのではなく、苦しみが減っただけです。
二杯目三杯目と飲んでいくうちに、一杯目の旨さは影を潜めます。「楽」だと思っていた感覚が「普通」の感覚へと変化していきます。そして飲み過ぎれば苦しいと感じ始めるのです!
飲むのをやめてしまえばいいのですが、そのあとも味に変化を与えて様々な飲食物を摂取していきます。これは生きている限り続けなければいけません。
食欲というものから生命は逃れることができず、どうする事もできないのです。
不食で生きている方もいますが、結局は生きるということから逃れることはできず、食欲以外のことの苦しみは逃れようがないのです。
私たちは、どうしようもない苦しみの連続から逃れようと、どうする事もできない欲求から少しでも解放されようとしているのです。
では一体どうすればこのどうしようもない苦しみから逃れることができるのでしょうか?
どうする事もできないのに悩み苦しむ理由は「こだわり」と「執着」
人間関係のトラブルはほとんどが自分の都合を曲げられないから起きます。そりゃそうですよね。自分の都合を最優先させたいというのが普通です。しかし、その普通のままだとずっと悩み続けることになります。
悩みや苦しみを消すのは実に簡単なことで、こだわりを捨てることです。物事はこうあるべきだ、という考えに執着することをやめればいいのです。たったそれだけ。
希望を持つことは良いことですが、「別に叶っても叶わなくてもいいけど、とにかく前進しよう」という方が苦しくないはずです。「何が何でも達成してやる!」と頑張りすぎてしまうと、意外とパフォーマンスは下がります。そして苦しくなります。そういうものなのです。
頑張らず、欲張らず、こだわらず、執着せずに、淡々とゴールへ向かうというのが幸せなのです。結局はそれでも一切皆苦なのです。
そう思うと気持ちが楽になってくると思います。そして気づいたら本当の意味での幸せな人生を歩んでいることでしょう。
諸法無我 自我をなくせば楽になる
こだわりや執着をなくすことに通じてくる話ですが、それらをなくす簡単な方法は、自我なんてないんだと理解することです。
もともと生命は単細胞生物から始まっています。
ところが、地球の環境が激変する中で、生き延びるためにある工夫をしなければいけませんでした。それが相互扶助という方法です。つまり、単細胞生物同士が集まって協力して生き延びようということです。
その成れの果てが多細胞生物である動物や植物、そしてあなたなのです。
生命のラヴストーリー
生命は約38億年前に誕生しました。
誕生してから約10億年間は無酸素で暮らしていました。解糖系と言って、糖分を分解した時に生じるエネルギーを利用して生活していました。今の私たちのように酸素を利用して生きていたわけではなかったのです。
その後どうなったかというと、太陽の光を使って光合成をする細菌というものが生まれました。
細菌は光合成の結果出てくる老廃物として酸素を放出するようになり、地球上に酸素が増えてきました。
無酸素で暮らしていた我々のご先祖様は、酸素が増えてきた地球上での生活が困難になってきます。
無酸素が快適だった生命は、絶滅寸前となっていきます。
我々の先祖は、どうやってこの危機を乗り越えたのでしょうか。
どこから現れたのかはわからないのですが、我々の先祖が絶滅寸前の頃、酸素をうまくエネルギーに変換する、ミトコンドリア生命体というものが生まれていました。
なんとそのミトコンドリア生命体が、我々の先祖である無酸素で生きる生命体に寄生し始めたのです。一方は酸素が大好き、一方は無酸素が大好き、この相容れない関係の両者が結婚してしまいました。
しかし、ご想像の通り、この両者の共同生活はうまくいかず、二つの生命体が安定した関係を持てるようになるまで、約15億年ほどかかったのです笑。
つまり、お互い異質な存在ではあるのですが、我々は共生してお互い助け合いながら生きているのです。そうやって生き延びてきたわけなのです。この事実一つとってみても、決してあなた一人であなたの体を生かしているわけではないということが理解できるのではないでしょうか。
この事実を広い意味で捉えるならば、地球上の生命体は、お互いに助け合いながら生き延びていく必要があるのです。誰も一人で生きている生命はいないのです。
そしてこの地球そのものが一つの生命体なのです。
五蘊皆空 あなたは何者にでもなれます!
最後は五蘊皆空についてです。
五蘊とは、生命の構成要素は五つであり、それぞれ別々の働きがあります、と教えています。その働きが「自我」という錯覚を生んでいるということを、お釈迦様は発見されました。
今の時代となっては当たり前に心理学や脳科学が発見していますが、それを一人で自己観察だけで発見したのは驚くべき事実です。
ではその五蘊とは何か?
- 色(しき)
体、物質でできた身体のことです。 - 受(じゅ)
感覚のことです。人間であれば視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚がありますが、心の感覚というものもここに入ります。現代風にいうと言語を理解する感覚です。 - 想(そう)
イメージ・記憶のことです。何か感覚器官で情報に触れたならば、脳は記憶の中から「何か似た経験をしたことがないかな?」とイメージして想起します。 - 行(ぎょう)
情動や衝動のことです。何かをしたいというエネルギーの働きです。 - 識(しき)
認知する働きです。情報を受け取り、イメージし、イメージしたものに対して衝動が生まれ、最終的にこの認識する働きが生まれます。認識した対象に対して判断もします。
生命は全てこの働きだけですよ、とお釈迦様は教えてくれています。
外部からの激流のような情報の波に常にこの五蘊が休みなく凄まじい勢いで動いているのです。五蘊は無常なのです。どうすることもできません。ですから五蘊は「苦(dukkha)」です。
そしてこのエネルギーの流れは「自我」だと言えるでしょうか?「自由意志」と言えるでしょうか?
因果法則や宇宙の法則に従って、無常に五蘊の働きが走るのみです。こんな大変なものを「自分のものだ!「愛おしい体だ!」と思えるでしょうか?
悩むだけ無駄なのです。
しかし、因果法則に従って流れるので、その因果法則を利用しさえすれば、五蘊の流れをある程度はコントロールできます。
五蘊は環境次第で変化していく
五蘊は環境さえ整えば、因果法則に従い、条件によっていかようにも変わっていきます。
諸行無常の冒頭で生命に関するお話をしました。生命は外部環境だけでなく、内部環境にもフィードバックループを築いてるということでした。
病気というのも、この五蘊の状態の一つにすぎません。ですが、五蘊は環境によっていかようにも変わっていきますので、健康な五蘊の状態になることもできるのです。
つまり固定的な五蘊の状態というのはあるとも言えるし、ないとも言える、あるとも言えないし、ないとも言えないのです。少しまどろっこしいですが、そういうことです。
あるともないともどちらとも言えないということを「空」と定義しています。
五蘊は環境次第でいかようにも変わるのであるならば、五蘊は空です。五蘊皆空なのです。
環境を整えて健康で幸せになろう!
五蘊の構成をもう一度思い出してください。気づいている方もいるかもしれませんが、生命を構成する働きは精神的な要素が大半を占めています。
色は物質的要素、受想行識は精神的要素です。つまり1:4の割合で環境を整えればいいという結論が導き出されます。
世間では食事に関する健康法ばかりが重要視されている感があります。必要なことではあるのですが、惜しいですね、という感じです。
タバコを吸い、肉食中心の生活をしている人でも、長生きして病気とは無縁の生活をしている方もいます。なぜでしょうか?そのヒントは五蘊を理解していれば簡単にわかるはずです。
生命はほとんど精神的要素で生きているからです。
精神的要素である80パーセントが健康にとって素晴らしい環境であれば、20パーセントの物質的要素の環境が悪くても、どうってことないということがわかるはずです。
健康で幸せな環境というのは、ストレスなく気楽に笑って過ごせるようにするだけなのです。その方法はあなたにとってストレスなく生活できる方法であればなんでもいいのです。決まった方法はありません。
賢い患者の七か条
ストレス対策を具体的にどうすればいいのかがわからない方のために、私の名刺の裏に記してあるものをご紹介いたします。
元気が無くなった時や、何か悩んで苦しい時や、病気などで苦しいときのチェック項目として利用してみてください。全て達成できていれば高い確率で自然治癒力が格段にアップします。
- メディアや権威ある人の発言を鵜呑みにせず、自分で確かめて調べる
- 病気が治った人や元気な人と一緒に時間を過ごす
- あらゆるものに感謝の念を送る
- 症状は全て健康になろうとする免疫反応と心得ている
- 病気は医者や治療家が治しているのではなく、自身に備わった自然治癒力であると理解している
- ゴールと生きがいを基準に生活し、日々慈しみと喜びで心が満たされている
- いい、加減に生きて笑っている
食事に関する項目はありませんが、現代ではどのような食事も毒に侵されている危険性があるので、なるべく少食にしていき、何でもかんでも貪らないことです。そう思っている方が、食事に執着せず、こだわらず、精神的にストレスなく過ごせると思います。
オーガニックや発酵食品など、自然で新鮮な野菜を取ることは非常に良いことだと思います。それで心がストレスなく過ごせるのならば実践してみても良いでしょう。
しかし、心を毒で犯さないことも気をつけましょう。
ブッダの教えとともに生きる
ここまで仏教についてのお話をしてきました。仏教についての情報は今や書店などにもたくさんあります。
仏教は健康で幸せに生きるというよりは、それすらも超越した生き方を説いています。しかし、超越した生き方を説いているので、健康とか幸せとか、人間関係の悩みなどは、仏教にとっては朝飯前ぐらいの次元です。
だからこそブッダの教えが健康と幸せに役に立つのです。
そして健康で幸せになったら、その先の道までしっかりと説いてあります。
興味のある方がいましたら、ぜひ仏の教えに触れてみてください。
また、音声動画でも今回の記事の内容を説明しています。違った視点で聞くことができると思いますので、興味のある方はどうぞ。
生きとし生けるものが幸福でありますように!